空き家の管理方法は相続人に何が必要？遠方でもできる対策を紹介

空き家の適切な管理が求められる理由

空き家を放置すると、さまざまな問題が生じます。法的リスクや近隣への影響、さらには所有者自身の負担増加など、多岐にわたるリスクが存在します。これらの問題を未然に防ぐため、空き家の適切な管理が求められています。

まず、空き家を放置することによる法的リスクについて説明します。空き家が倒壊したり、外壁や屋根材が落下して第三者に損害を与えた場合、所有者は損害賠償責任を負う可能性があります。さらに、空き家が不法侵入や放火の対象となり、犯罪の温床となるケースも報告されています。これらの事態が発生すると、所有者は法的責任を問われるだけでなく、近隣住民とのトラブルにも発展しかねません。

次に、空き家対策特別措置法に基づく所有者の管理義務とその重要性について解説します。平成26年に制定された空家等対策の推進に関する特別措置法（以下、空家法）では、適切に管理されていない空き家を「特定空家等」として指定し、市区町村が所有者に対して指導や勧告を行うことができます。令和5年の法改正により、放置すれば特定空家等となる恐れのある「管理不全空家等」も新たに定義され、所有者の管理責任が一層強化されました。これにより、適切な管理が行われていない空き家に対しては、固定資産税の軽減措置が解除される可能性があり、所有者の負担が増大することとなります。

最後に、遠方に住む相続人が空き家を適切に管理する必要性を強調します。相続により空き家を取得したものの、遠方に住んでいるため管理が難しいケースは少なくありません。しかし、空き家の適切な管理は、法的リスクの回避や近隣住民との良好な関係維持のために不可欠です。遠方に住む相続人であっても、定期的な現地訪問や専門業者への委託など、適切な管理方法を検討し、実施することが求められます。

以下に、空き家を放置することによる主なリスクをまとめます。

このように、空き家の放置は多くのリスクを伴います。特に遠方に住む相続人は、これらのリスクを認識し、適切な管理を行うことが重要です。

遠方の相続人が行うべき空き家の基本的な管理方法

遠方に住む相続人が空き家を適切に管理することは、法的責任を果たし、資産価値を維持するために重要です。以下に、基本的な管理方法を紹介します。

まず、定期的な現地訪問が必要です。可能であれば、数ヶ月に一度は現地を訪れ、建物の状態や周囲の状況を確認しましょう。訪問時には、以下の作業を行うことが望ましいです。

• 家の周囲の清掃：ゴミや落ち葉を取り除き、可燃物が散乱していないか確認します。
• 草むしりや樹木の剪定：庭や敷地内の草木が繁茂しすぎないよう手入れを行います。
• 雨どいの点検：詰まりや破損がないか確認し、必要に応じて清掃や修理を行います。
• 室内の換気：窓を開けて風を通し、湿気を逃がすことでカビの発生を防ぎます。

次に、近隣住民との良好な関係を築くことが大切です。空き家の状況を把握するため、近隣住民に連絡先を伝え、異常があった際には連絡をもらえるようお願いしましょう。これにより、不審者の侵入や災害時の被害を早期に把握できます。

さらに、専門業者への定期的な点検や修繕の依頼も検討すべきです。建物の老朽化を防ぐため、以下の点検を行うことが推奨されます。

これらの管理作業を適切に行うことで、空き家の劣化を防ぎ、資産価値を維持することができます。遠方に住んでいる場合でも、計画的な管理を心がけましょう。

相続放棄と空き家の管理義務に関する注意点

相続放棄を行えば、財産や負債の承継を免れることができますが、空き家の管理義務が完全に消滅するわけではありません。以下に、相続放棄後の空き家管理に関する重要なポイントを解説します。

相続放棄後も管理義務が残る場合

2023年4月の民法改正により、相続放棄をした者が相続財産を現に占有している場合、その財産を自己の財産と同様に保存する義務が生じます。具体的には、相続放棄時に空き家を使用していたり、管理していた場合、次の管理者に引き渡すまでの間、適切な管理を行う必要があります。これを怠ると、損害賠償責任を問われる可能性があります。

相続財産清算人の選任手続きと役割

相続人全員が相続放棄を行い、管理義務を負う者がいない場合、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることができます。相続財産清算人は、相続財産の管理や清算を行い、最終的に残余財産を国庫に帰属させる役割を担います。選任手続きには、必要書類の提出とともに、数十万円程度の予納金が必要となる場合があります。

相続土地国庫帰属制度の概要と利用条件

2023年4月27日から施行された相続土地国庫帰属制度により、相続や遺贈で取得した土地を国に引き渡すことが可能となりました。ただし、以下の条件を満たす必要があります。

さらに、審査手数料として土地一筆あたり14,000円が必要となります。手続きの詳細や条件については、専門家に相談することをおすすめします。

遠方の相続人が利用できる空き家管理サービスとその選び方

遠方に住む相続人にとって、空き家の適切な管理は大きな課題です。自身での管理が難しい場合、専門の空き家管理サービスを利用することで、物件の維持や近隣トラブルの防止が可能となります。ここでは、空き家管理サービスの内容や選び方、利用のメリットについて詳しく解説します。

空き家管理サービスの主な内容と提供される業務

空き家管理サービスは、所有者に代わって物件の維持・管理を行う専門サービスです。主な業務内容は以下の通りです。

• 定期巡回：月に1回程度、物件を訪問し、外観や内部の状況を確認します。
• 清掃：室内外の清掃を行い、衛生的な環境を維持します。
• 換気：室内の空気を入れ替え、湿気やカビの発生を防ぎます。
• 通水：水道を定期的に使用し、排水管の劣化や悪臭を防止します。
• 郵便物の確認：郵便受けの整理や不要なチラシの処分を行います。
• 庭木の手入れ：庭の草刈りや樹木の剪定を行い、景観を保ちます。

これらの業務を通じて、空き家の劣化を防ぎ、資産価値の維持や近隣への配慮が可能となります。

サービス選定時のポイントや注意点

適切な空き家管理サービスを選ぶためには、以下のポイントを考慮することが重要です。

• サービス内容の確認：提供される業務範囲や頻度を詳細に確認し、自身のニーズに合致しているかを検討します。
• 費用の明確化：基本料金や追加オプションの費用を明確にし、予算内で収まるかを確認します。
• 業者の信頼性：過去の実績や利用者の口コミを参考に、信頼できる業者かを判断します。
• 契約内容の確認：契約期間や解約条件、トラブル時の対応など、契約内容を十分に理解しておくことが重要です。

これらの点を踏まえ、複数の業者を比較検討することで、最適なサービスを選択できます。

空き家管理サービスの利用によるメリットと費用対効果

空き家管理サービスを利用することで、以下のメリットが得られます。

• 手間の軽減：遠方に住む相続人でも、専門業者に任せることで管理の手間を大幅に削減できます。
• 資産価値の維持：定期的な管理により、建物の劣化を防ぎ、将来的な売却や活用時の価値を保てます。
• 近隣トラブルの防止：適切な管理により、景観の維持や防犯対策が行われ、近隣住民との良好な関係を維持できます。

一方で、サービス利用には費用が発生します。一般的な月額費用は以下の通りです。

費用対効果を考慮し、空き家の将来的な活用計画や予算に応じて、サービスの利用を検討することが望ましいです。

遠方に住む相続人にとって、空き家管理サービスは有効な手段となります。適切な業者選びとサービス内容の確認を行い、安心して物件の管理を任せることが重要です。

まとめ

空き家の管理は、遠方の相続人にとって大きな負担となりがちですが、法的リスクや近隣への悪影響を防ぐためにも避けて通れない重要な課題です。定期的な訪問や清掃、換気を怠らず、近隣住民と協力関係を築くとともに、必要に応じて専門業者や管理サービスの利用を検討しましょう。また、相続放棄や管理義務、国庫帰属制度など、法制度の基礎知識もしっかり押さえておくことが安心につながります。当社では、遠方でお悩みの相続人様に役立つサポートやアドバイスもご用意しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。