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不動産売却で税金はどこに注意すべき?緑地指定を活用した対策方法も紹介

不動産売却

竹下  猛

筆者 竹下  猛

不動産キャリア13年

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不動産を売却するとき、どのくらいの税金がかかるのか、また少しでも税負担を減らす方法があるのか、気になる方は多いのではないでしょうか。特に相続や住み替えをきっかけに売却を考える場合、知っておきたい制度や控除、さらには生産緑地といった緑地指定の仕組みが大きく影響します。この記事では、不動産売却に関わる主な税金のしくみや、負担を軽くするための具体的な対策方法を、丁寧に分かりやすく解説します。ぜひ参考にして、賢い売却を進めましょう。

税金負担を軽減する基礎知識と制度全体像

不動産売却に際して課される主な税金には、譲渡所得税(所得税と住民税)、印紙税、登録免許税などがあります。譲渡所得税は売却による利益に対して課税され、印紙税は売買契約書に、登録免許税は所有権移転登記にかかります。そのため、これらを含む全体構造を把握することが節税の第一歩となります。

譲渡所得の計算の基本式は「譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)」です。この譲渡所得に対して税率を掛けて税額が決まります。所有期間が5年以下の「短期譲渡所得」では税率が高く、【例:所得税30%+住民税9%】、5年超の「長期譲渡所得」では税率が下がり【例:所得税15%+住民税5%】となります。所有期間が10年を超えるとさらなる軽減税率が適用される場合もありますので、時間的なコントロールが節税に有効です(例:所得税10%+住民税4%)。

相続や住み替えを想定した節税対策として代表的なのは以下のとおりです。

制度・特例名称概要適用のポイント
居住用財産の3,000万円特別控除居住していた住宅の譲渡所得から最高3,000万円控除可能居住要件・売却時期に制限あり(3年以内など)
軽減税率の特例所有期間(5年以上、特に10年以上)によって税率が軽減「短期」よりも「長期」が有利。3,000万円控除との併用も可能
相続空き家の3,000万円特別控除被相続人が住んでいた住宅を相続し、売却した場合に使える相続開始から一定期間内の売却が条件

上記の制度を組み合わせることで、譲渡所得を減らすだけでなく、税率そのものを下げることも可能です。特に相続した自宅や住み替えのケースでは、期限や要件を踏まえて計画的に対策することが重要です。

生産緑地(緑地指定)による税金対策のポイント

生産緑地制度は、都市部の農地を長期間にわたって保全し、都市環境を守るために設けられました。市街化区域内の農地を「生産緑地」として指定すると、宅地と比べて固定資産税が大幅に軽減され、相続税等の納税猶予措置が受けられます。ただし指定期間中は転用や建築に制限があり、農地としての維持が求められる点に注意が必要です。

「2022年問題」とは、この制度で指定を受けた土地の多くが指定から30年を経過し、一斉にその期限を迎えたことにより、市区町村への買取請求や指定解除の流れが起こった問題です。結果として、優遇措置が消滅すると固定資産税が宅地並みに跳ね上がり、相続税の一括納付義務も発生するなど、税負担が急増する懸念があります。

こうしたリスクに対応するため、2017年の制度改正では「特定生産緑地制度」が創設されました。これにより、30年経過前に申請すれば税制優遇と転用制限の期限をさらに10年延長でき、さらに10年ごとの延長も可能です。これによって税負担の急増を回避しつつ長期的な維持が可能となりました。

以下の表に、生産緑地制度および特定生産緑地制度を活用する際の主なメリット・留意点を整理しています。

制度主な税制優遇注意点・リスク
生産緑地(指定後30年)固定資産税が農地並みに軽減
相続税の納税猶予あり
30年超過で指定解除可能
税負担急増・一括納税のリスク
特定生産緑地(延長制度)税制優遇を最長+50年程度延長可能
延長ごとに10年単位で継続可能
農地としての利用継続義務
転用・建築制限が延長される
指定解除後--固定資産税が宅地並みに上昇し
相続税の納税猶予も消滅

相続や住み替えを検討されている方へ
生産緑地の制度を活用されている土地を相続または売却する際には、「特定生産緑地制度」の延長手続きを優先的に検討されることをお勧めします。制度の適用によって税負担を先延ばしできるだけでなく、緑地の保存を維持しながら柔軟な売却タイミングも見据えることが可能です。一方、指定解除や買取請求という選択肢もありますが、それには税負担の増加や一括納税の義務が伴うため、早めに専門家へご相談いただくのが安全です。

活用したいその他の税負担軽減策

相続や住み替えで不動産の売却を検討する方にとって、緑地指定以外にも税負担を軽減する制度があります。ここでは、とくに活用しやすい代表的な特例や控除を整理します。

制度名 概要 ポイント
相続空き家の3000万円控除 被相続人が住んでいた住宅を相続後に売却する場合、譲渡所得から最高3000万円を控除できます。 売却期限や建物の状態など、細かな要件の確認が必要です。
居住用財産の3000万円特別控除+10年超所有軽減税率 居住用の自宅を売却するとき、3000万円の控除に加え、10年以上所有の場合には軽減税率が適用されます。 所有期間の通算不可、ないし売却期限の制限に注意してください。
取得費加算の特例 相続によって取得した不動産を相続開始から3年10か月以内に売却する場合、支払った相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得税を軽減できます。 遺産分割の合意など売却準備を早めに進めることが重要です。

以下、それぞれについてもう少し詳しくご説明いたします。

まず「相続空き家の3000万円控除」は、被相続人が居住していた家屋およびその敷地を相続し、相続後に売却する際、譲渡所得から最高3000万円を控除できる制度です。この特例を使うには、相続から売却までの期限や建物の使用状態など、さまざまな条件がありますので、事前にしっかり確認することが大切です。

次に「居住用財産の3000万円特別控除と軽減税率特例の組み合わせ」は、自らが居住していた住宅を売却する場合に適用できる制度です。まず3000万円の控除を受け、さらに所有期間が10年を超えていれば、譲渡所得税においてより低い税率が適用されます。特例を受けるためには、居住期間ではなく所有期間であること、譲渡先が親族等特別な関係にある人でないこと、空き家化後の期限など細かい要件もあります。

最後に「取得費加算の特例」ですが、これは相続により取得した不動産を、相続開始後3年10か月以内に売却することで、支払った相続税の一部を取得費に上乗せできる制度です。これにより譲渡所得が減り、結果として譲渡所得税の軽減が図れます。適用には、相続税の課税があること、期限内に譲渡すること、適切な手続きを行うことが必要です。遺産分割協議を早めに進めるなどの準備も重要です。

これらの特例・控除は、それぞれ適用条件が異なりますので、ご自身の相続や住み替えの事情に合わせて最も有利な制度の活用を検討し、売却計画を立てる際は税理士など専門家へ早めにご相談されることをおすすめいたします。

賢く売却を進めるための実践ステップ

相続や住み替えで不動産の売却をお考えの方に向けて、税負担を抑えながら計画的に進めるための実践的なステップを整理いたします。

ステップ内容のポイント備考
専門家への相談まず税理士など専門家に相談して、適用可能な控除・特例の確認を行います。税制適用の可否は個別事情で異なりますので、早めの相談が安心です。
緑地指定の有無と解除時期の確認生産緑地・特定生産緑地の指定がある場合、その解除要件や時期を把握してスケジュールを調整します。解除後、固定資産税が宅地並みに上昇するため、段階的な引き上げ期間を利用するなど工夫が可能です。
売却スケジュールの設計住み替えや相続と合わせて、売却のスケジュールを立案。緑地指定解除のタイミングや相続税納税期限と調整します。たとえば、解除申請には3か月以上かかり、その後1年を超えるスケジュールとなるケースがあります。

まず、税理士などの専門家にご相談いただくことで、たとえば相続税の納税猶予制度や取得費加算の特例など、ご事情に応じた制度が適用できるかが明確になります。

また、生産緑地や特定生産緑地として指定されている土地の場合、指定解除の要件(指定後30年、主たる従事者の死亡や疾病など)や解除にかかる期間をきちんと確認しておくことが重要です。指定解除後は固定資産税が著しく上がるため、段階的な引き上げ措置の利用や緑地延長の検討も考慮しましょう。

さらに、売却までの具体的なスケジュールを立案します。たとえば解除申請には最低3か月以上要し、その後、境界確定や利害関係人との調整なども含めると、実際の売却完了まで1年半以上かかる場合もあります。

住み替えや相続の状況に合わせて、売却時期をずらすことで税負担を抑制できる場合がありますので、ご自身の状況に応じたスケジュール調整を専門家とご一緒にご検討ください。

まとめ

不動産売却における税金対策は、譲渡所得税や住民税などの把握と、それぞれの取引状況に合った特例や控除の活用が大切です。特に相続や住み替えでは、生産緑地指定などの制度を利用することで、固定資産税や相続税の優遇が受けられる場合があります。事前に相談しながら、適切なタイミングで手続きを進めることが、税負担を軽くし、安心して不動産売却を成功させるカギとなります。売却を検討される際は、ご自身に合った最善の方法を選びましょう。


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