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相続不動産の緑地売却は何から始める?方法や手続きの流れも解説

不動産売却

竹下  猛

筆者 竹下  猛

不動産キャリア13年

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相続や住み替えをきっかけに、緑地や生産緑地の売却を考える方は少なくありません。しかし、緑地には独自の法的・税務上のルールがあり、売却までの道のりには多くの手続きや注意点が存在します。きちんと理解せずに進めると、予想外の税負担や条件に戸惑うことも。本記事では、緑地の相続や売却に関する基本的な仕組みや注意点、スムーズに手続きを進めるためのポイントを分かりやすく解説します。正しい知識を得て安心して売却を進めましょう。

(相続した緑地が抱える法的・税務的な特性)

相続された生産緑地には、都市計画上の規制や税務面での優遇措置という特有の性質が存在します。まず、生産緑地とは市街化区域内に指定された農地や緑地であり、建築や転用が制限される一方、最低でも三十年間の営農義務を負うことで、固定資産税が農地評価となり、宅地並の課税に比べて大幅に軽減されます。場合によっては数十倍から百倍以上の差が生じます(固定資産税の軽減)。

次に、相続税や贈与税においては、生産緑地の指定を継続し営農を続けることで「納税の猶予」や将来的には「免除」を受ける制度が用意されています。これは、宅地評価と農地評価の差額部分が猶予対象となる仕組みであり、相続人が被相続人と同様に農業を続ける場合に適用されます。

表:法的・税務的特性の比較

要素 内容 備考
固定資産税 農地評価により軽減 宅地評価に比べ、税額が大幅に低い
相続税・贈与税 納税猶予・要件満たせば免除 農業継続が前提
指定期間 30年の営農義務 指定後に指定解除や特定指定可能

以上のように、生産緑地は法的制約と税制優遇がセットになっており、相続後にただ手放すことはできず、営農の継続や指定解除の検討といった対応が必要になります。

相続した生産緑地を売却するための手続きと条件

相続により引き継いだ生産緑地を売却するためには、まず「生産緑地の指定解除」の手続きが必要です。指定解除のための主な要件は次の三つです。①指定から30年が経過、②主たる農業従事者が死亡、あるいは③農業従事を困難とする傷病が生じた場合です。これらのいずれかに該当する場合、市町村長への「買取の申出」を提出できます。

申出後は市町村により1か月以内に買取の可否が通知されます。買取がされない場合には、市町村が農業希望者へのあっせんを行い、3か月以内に成立しなければ行為制限が解除されます。解除された後は宅地化や売却が可能となります。

指定解除後は、農地を宅地に転用できるようになる一方で、固定資産税や都市計画税は宅地並み課税となり、大幅に税額が上昇します。また、相続税の納税猶予が打ち切られた場合は、猶予されていた税額に対し「利子税」が課される点にも注意が必要です。

解除要件 対応手続き 結果
指定から30年経過/特定生産緑地10年経過 市町村へ買取申出 解除手続き開始
主たる従事者の死亡 戸籍謄本による証明を添えて買取申出 審査開始
農業不能な傷病 医師診断書等により申請 審査開始

住み替えや資金確保を見据えた相続不動産売却の準備

まずは相続登記の手続きを忘れずに行いましょう。ご自身の名義に変更することで、売却の際に法的にも安心です。登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%となりますので(例:評価額3,000万円なら12万円)準備しておく必要があります。さらに、評価や承継を見据えた事前の検討や相続プランを立てておくと、売却後の住み替えや資金計画がスムーズに進みます。

次に、「空き家特例」と呼ばれる特別控除制度について確認しましょう。相続により取得した空き家を売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。ただし、以下の要件を満たす必要があります:相続開始から3年後の12月31日までの売却、土地も一緒に相続していること、建物は昭和56年5月31日以前の旧耐震であること、売却先が第三者であること、売却価格は1億円以下、さらに耐震改修または解体・更地化を売却前後に行うことなどです。

この制度の適用期限は延長されており、令和9年(2027年)12月31日までとなっています。令和6年(2024年)以降に譲渡する場合は、買主が耐震改修や解体を譲渡の翌年2月15日までに行うことでも適用可能となり、活用しやすくなっています。ただし、相続人が3人以上いる場合は控除額が3,000万円から2,000万円に減額されますのでご注意ください。

最後に、住み替え先の確保や生活資金の検討も重要です。売却のタイミングによっては、資金が手元に入る時期や額が変動します。特に空き家のまま年月が経過すると維持管理の負担や税負担(固定資産税など)が増える可能性もあるため、販売時期と住み替えのスケジュールはできるだけ重ならないように計画を立てましょう。

準備項目内容注意点
相続登記固定資産税評価額の0.4%を登録免許税として納付司法書士への依頼費用も考慮
空き家特例の適用譲渡所得から最大3,000万円控除可能(要件あり)売却期限や要件を満たさないと適用外
住み替え・資金計画売却時期に合わせて資金確保と住居確保を調整空き期間や税負担増に注意

緑地相続後の相談先と安心して進めるためのポイント

相続した生産緑地について、安心して手続きを進めるには、まず専門家への相談が欠かせません。相続税の申告には税理士、不動産の名義変更には司法書士、それぞれの役割に応じた対応が必要です。例えば税理士は評価の難しい生産緑地の評価額を適切に算出し、節税につながる可能性もあるため、相続案件に詳しい税理士を選ぶことが大切です。また相談内容が複数にわたる場合、税理士から司法書士や行政書士へ連携してもらえるケースも多く、相談時には目的や不安な点を整理して伝えるとスムーズです。さらに、相談料の相場としては初回無料の事務所もある一方、正式依頼時には遺産総額の0.5~1%程度が目安ですので、事前に確認しておくと安心です。

相談先主な対応内容費用の目安
税理士相続税申告・評価額算定初回無料・依頼時は遺産総額の0.5~1%程度
司法書士所有権移転登記など名義変更案件により異なるが、登記費用のほか報酬が必要
行政書士農地転用届出など行政手続き対応届出で約3~5万円、許可申請で約7~10万円

次に、行政手続きについては、農業委員会や市区町村の窓口で情報収集し、必要な手続きを漏れなく実施することが求められます。例えば、生産緑地の指定解除を検討する際には、まず市町村へ買取り申出が可能かどうか相談し、主たる従事者証明など必要書類の確認と取得準備を進めます。そのうえで手続きを進めることで、過誤や遅延を防げます。

最後に、売却に関して迷われる場合は、猶予を継続すべきか、それとも解除して売却・転用を進めるべきか、判断基準を整理することが重要です。たとえば今後も農業を継続する見通しがあり税優遇を維持できる場合は猶予を継続するメリットが大きいですが、営農の継続が難しいと見込まれる場合は、買取り申出や解除・売却の検討も必要です。それぞれの選択肢の税負担や手続きの難易度、時間的余裕を比較し、最適な進め方を選びましょう。

まとめ

相続した緑地を売却する際は、生産緑地に関する法的・税務的な特徴や手続きのほか、ご自身やご家族の将来設計も踏まえた準備が不可欠です。生産緑地の指定解除や納税猶予の有無によって必要な手続きや税負担も異なるため、専門家への相談や情報収集をしっかり行うことが大切です。正しい知識を持つことで、安心して大切な資産を有効に活用する一歩が踏み出せます。


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